マイクロソフトのマネジメントとは?
今の私の目標は「人のモチベーションを向上させ、自律的な行動へつなげると同時に、その集団のパフォーマンスを上げる」ことができる人間になることである。
当然、結果を出している企業のマネジメント方法は気になる訳で、今回読んだのがこの本。
- 作者: デビッドシーレン,David Thielen,成毛真,岩崎尚人
- 出版社/メーカー: 日本能率協会マネジメントセンター
- 発売日: 2000/07
- メディア: 単行本
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※詳細は彼のサイトThe Thielen Home Pageのresumeを参照。
その後も様々な企業で開発担当として仕事をしており、マネジメント経験もあるようである。
私がMSPと呼ばれる業種にいた頃、前職がMicrosoftだった方がいた。
彼の仕事ぶりはすさまじく、早いし、中身も濃いし、しかも夜中まで働く。
「MSはこんな人がいるから独占するくらいの結果を出しているんだなぁ」と感心していた。
長きにわたって成長し続けてきたことは、この栄枯盛衰の激しいIT業界においては非常に困難なことであり、MSはやはりすごいと思う。
また今、イノベーションのジレンマを越えて変革しようとしている姿を見ると、やはりとんでもない企業であると感じる。
そんなMSのマネジメントの中身は一体!?
発行後5年ほど経っており、また業界が異なると参考にならないかもしれないが、役立つことはあるだろうと読んでみた。
特に憶えておきたいと思ったのは以下の点である。
「失敗はいいことである」
社員がチャレンジングになるように、リスクを冒そうとする人間を結果の如何に関わらず昇進させる。また、問題を明確にするように上層部から圧力がかかり、それが明らかになると解決するための支援が得られる。
これらにより「チャレンジし、問題に直面したらすぐに明らかにして解決する」カルチャーを醸成していく。
この場合失敗することが多くなるが、成功へ挑戦するには失敗はつきものであり、必要であるとすら言える。
この場合、どんな失敗があり得るか事前に予測しておき、失敗したら早めに対処することが重要である。その失敗は確実に学習に繋がり、次の成功へ繋がる。
挑戦しなければ学習もできず、成功できない。
当然のことなのだが、一般に企業ではやはり失敗することは許されず、結局無難な行動に終始するパターンに陥っており、チャレンジを実践できているところは少ない。
「仕事の質は社内プロセスやマネジャーのレベルではなく、結局社員のレベルで決まる」
- 作者: ウィリアムパウンドストーン,松浦俊輔
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2003/06/15
- メディア: 単行本
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「マネジャーががんばれば」とも思えるが、仕事をするのはメンバーであり、メンバーが優秀でなければ成り立たない。
故に「ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?」にもあったが、MSは、本当の賢さがある上位5%のAクラスの人間を求めている。
採用では、経験や知識、業務スキルではなく「どのくらい考える力があるか」を見極めることを最重要視している。
面接は、採用セクションのメンバー4,5人が、個別にcandidateへinterviewを行い、1時間ずつ質問攻めにするというかなり時間をかけたプロセスを採用している。
マネジメントを勉強している身としては「優秀な社員は育成できない」と言われると身も蓋もない・・・と思ってしまうが、これは事実。ほんと自分で考えられる社員が少ない。だから「自律的な社員」を育成しようと努力しているのだ。
「小さな企業であり続ける(オーナーシップと団結心)」
(1) 面白く刺激的な仕事
(2) 小グループのプロジェクトベースの仕事
(3) チームの成功と、自身の成果・チームへの貢献によってのみ、上司から、そして同僚から評価される
(4) 制度やルールは各グループが必要に応じて独自に作る。官僚的・無意味な束縛をしない
(5) 責任と権限をなるべく委譲し、自分たちで決められる
(6) チームビルドのための頻繁な、楽しいミーティング、
(7) チームビルドになるユーモア(仕事中にソフトボール)
ベンチャー企業にあるようなメンバーの「情熱」は、素晴らしい結果を出すためにはとても重要である。大企業になればなるほど「適当にやってればいいよ」的な社員が増えても分からず、成果が上がらなくなってしまうのはよくあること。
MSは、ベンチャー的気質をいつまでも維持するために、このような工夫を行っている。
社員の仕事に対するオーナーシップを持たせ、責任ある、自律的・自発的・積極的な行動を促進している。
この結果、チームの成功のため、同僚からのプレッシャーが強まり、メンバー全員の成果が高まったり、提案をする際、自分の意見に有利な情報だけでなく、多面的に深く考え抜いた上で逆の不利な情報も提示し、その上で提案することで、迅速な意志決定ができるようになっている。
「オフィスを自宅のように」
知的ワーカーと呼ばれる職種であれば、いつでもどこでも、24/7仕事であると思う。
MSは「オフィス=自宅」に近い環境を提供することで、それを実現させようとしている。
具体的には、各社員に個室のオフィスを与え、自由にしてよいとし、音楽を聴いたりすることも問題ない。
またドレスコードもなく、ソフトドリンクを無料で与え(確かこれはなくなったらしいと元MSの古川氏のブログで読んだ記憶あり)、社内にカフェを設け、勤務時間も自由にしている。
「働き方は人によって違うことを認め、社員それぞれに、最も適切だと思われる環境を提供しようとしているからこそ、社員から最大限の成果を引き出すことができるのである。
多くの企業がそうであるように、社員を強引に一つの型に押し込めようとすれば、モラールや生産性は低下し、社員が仕事に費やす時間も少なくなる。」
「マネジャーの仕事の一つは、社員に楽しく仕事をさせることである」
一つの型に押し込めれば、管理は容易になるが、結果は・・・(T_T)
本の中で「上司からの配慮や社員との親密度と、企業の成功との間には、かなり高い相関があるようだ」という記述があり、心に響いた。
「小さな頃はがんばってたのに、今は・・・」という話はよくある。ソニーとか・・・
これらを心にとどめておきたいと思う。
このほか参考になったのは以下の点。
「仕事の焦点を絞る」
仕事(プロジェクト)の数が多いと、頭の切り替えに時間がかかり、生産性が落ちてしまう。
故に、仕事の数は絞り込んだ方がよい。
「情報を開示する」
非効率な企業=情報を隠匿し、本当に必要なときに小出しにする
「海軍のガイドライン」
どんなに重要な規則でも、それに従う人がいなければ規則にすべきではない
「ビルが見ている」
ビル・ゲイツ氏は直接社員のところにやってきて情報収集をする。
このことにより詳細な情報を得られると同時に、社員にいつも見ているよ、ということを知らしめることができる。
大企業ではまず無理なことだが、個人的にはこれは好き。
余談ですが、ビル・ゲイツ氏のshort temperぶりがよく分かるエピソードも書かれていて、http://spaces.msn.com/members/furukawablog/にもよく出てくるのですが、オーナー企業的なところもあるので、合わない人にはいにくいだろうなぁとも思いました(笑)