この素晴らしき世界に生まれて

「自分の基礎」は一体いつ頃、どうやって形成されたのか、幼い頃を思い出して考えたことが何度かある。
私の場合、冷静に考えると、自分の基礎を創るのに最も影響力があったのは、親、友達、学校の先生等のリアルな人間ではなく「本」だった。
今思い出せるのは、児童向けのSF等を図書館で借り毎日読んでいたり、土日に庭の草取りをがんばって、ご褒美にルパンやホームズの出てくるミステリーを買ってもらい読んでいたこと。そういえば、読みながら下校していて、水路に落っこちたこともあった。股の内側を派手にすりむいて、大変だった記憶がある。
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学校の図書館にあったこのSFシリーズは、もうドキドキで、熱中して読んでいたなぁ。特に、脳だけで生きている人間の話が強烈に印象に残っている。タイムパトロールとか、恐竜時代へタイムスリップとか、そんなのもあったような。

これらとは別に「よい人間であることの大切さ」を語り、素直に「よし、僕もいいことをしていこう」と思わせる児童文学作品も結構読んだと思う。私はその本達の登場人物に影響され、彼らのまねをして「よいことをする人間でいたい」といつも思い、行動することができていた。勿論、100%いい子であった訳はなく、塾のサボりやら万引きやらいろいろと問題も起こしたが、根本部分で「よい人間」をいつも意識していたので、何とかいい方向へ成長していけていたのだと、今なら分かる。
しかし、一体何を読んでそんな気持ちになっていたのか、さっぱり思い出せない。まぁ、さすがに私にはもう必要はないので思い出せなくてもよいのだが、3年生になる娘にはそういう本をぜひ読んでもらいたい。読んで、何かを感じ取ってもらい、善なる気持ちを身につける一助にしたいとてもらいたい。
そこで、先日の日曜日、月に2回ほど行く近くの図書館で、児童書のコーナーを娘と一緒に私も回り、いい本を探してみた。
しかし困った。当たり前だが本が多すぎる。タイトルを見てよさそうな本を手に取り少しだけ読んでみるが、どの本がよいかそう簡単には判断がつかない。といえど、ある程度読んでいたら数冊しかチェックできない。
そこで効率的な方法はないかと考えてみたが、やはり読んでみないと自信を持って娘には薦められないという結論に至った。
そこで、私が一旦借りて読んでみようと決め、熟考の末一冊借り、読み始めたのが「この素晴らしき世界に生まれて」という本。

聾学校に通う6年生の主人公 里美は、家族の中で自分の居場所がなく、自分はいらない子ではないかという不安を感じていた。聾唖者ゆえ言葉がうまくしゃべれないのはもちろんのこと、リコーダーも吹けないし、勉強も今ひとつで自分に自信がない。一体何のために生きているのか、進学を控えているにもかかわらず将来が見えず、輝いている姉や転校していった同じく聾唖者の同級生を見ては、焦っていた。
そんなときにいつも行く図書館で見つけた「死の谷の王女」という奇妙な本。その本の主人公の少女は、死を目前にした母を助けるべく、死の谷の王女に会うため冒険の旅に出る。その少女の冒険物語と里美の物語が同時に進みながら、里美が大切なものを発見していく。
里美は最後に家族だけでなく、怖いと思っていた先生や図書館の人にすら愛されていたことに気づき、安心感を取り戻し、また自分の夢を見つけ、目標を持って生きていくきっかけを得る。
児童文学であるにもかかわらず30歳も半ばの私が惹き込まれ、そろそろ眠らないと明日の仕事に影響があるという時刻になっても、つい熱中しページを繰ってしまっていた。
4年前に出版され、この図書館では私がまだ9人目(ということは平均 2人/年・・・)の貸し出し頻度というマイナー作品のようだが、これは心に残るおすすめ作品。作者の方にお礼を伝えたいので、お金を出して新品を買おう。
難しい漢字にはルビが振られており、3年生でも読めそうなので、届いたら早速娘に渡す予定です。

ちなみに読み終えて、村上春樹さんの「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」と「はてしない物語」も思い出した。この二つの作品も素晴らしいものでした。特に「はてしない物語」は小学生は必読でしょう!


今後、自分で児童文学を読んで、娘に読んでもらおうと思える作品に出会えたら、ここに書いていくことにする。
小学生辺りまでの幼い子を持つ同じような考えの親御さんの参考にもなればうれしいです。私も教えてほしいし。

この素晴らしき世界に生まれて (文学の森)

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